[特集インタビュー]

2025年7月号 369号

(2025/05/20)

伴走型で案件良質化を図る三井物産「事業開発部」の取り組み

尾崎 領(三井物産 ニュートリション・アグリカルチャー(N&A)本部事業開発部 部長補佐)
森 稜太(同 N&A本部 事業開発部 投資推進第4室 マネージャー)
前田 剛史(同 N&A本部 事業開発部、現アジア・大洋州三井物産株式会社 N&A室(在シンガポール))
  • A,B,C,EXコース
※本記事は、M&A専門誌マール 2025年7月号 通巻369号(2025/6/16発売予定)の記事です。速報性を重視し、先行リリースしました。

左から森稜太氏、前田剛史氏、尾崎領氏

左から森稜太氏、前田剛史氏、尾崎領氏

 三井物産では、M&Aやバリューアップに豊富な知見を持つキャリア人材が活躍している。多様なプロフェッショナルが在籍している事業開発部は、社内に事業投資やM&Aのノウハウが不足していた2009年頃にその専門組織として誕生した。現在は化学品、食料、流通、ウェルネスなど計6つの事業本部を横断的に支援している。その目的は、各事業本部の案件支援を通じて事業投資の質を高めることと、社内に知見を広げるハブ機能を持つ人材育成にある。

 具体的な活動はOJTとOFF-JTの二本柱で展開している。OJTでは他事業部門と並走し、M&Aのエグゼキューションから投資後のPMI、バリューアップ、エグジットまで実務を支援する。OFF-JTでは、ケーススタディや体系的な育成プログラムを通じて知見を共有している。

 部員は約40人。そのうち約半数が金融・コンサル・エンジニアリングなど多様なキャリア採用者で構成されており、元事業会社役員といったシニア人材も在籍する。メンバーは原則として2~3年で他事業部門へ異動し、培ったノウハウを社内に広げる仕組みとなっている。

 今後は、M&Aの実行に加え、投資後のPMIやバリューアップ機能の強化を目指す。また、将来の事業会社リーダー候補を育成するため、幅広い経験を積ませることに注力する。

 三井物産の事業開発部のメンバーとOBに事業開発部の事業内容や業務実態についての話を聞いた。
事業開発部の概要と歴史

―― 事業開発部の概要や、三井物産の中での位置付け・生い立ちを教えてください。

尾崎 「近年は三井物産においても事業投資は当たり前になっていますが、振り返るとこの部が誕生した 2009年当時は、社内で事業投資の認知度もノウハウも十分に蓄積されていませんでした。そのため、まず化学品セグメント内に、事業投資を支援する専門組織を立ち上げ、翌2010年には食料本部にも同様の組織を誕生させました。

 当時は、外部のFAとどのように協業し、M&Aを進めるかという経験値が社内に乏しく、理解している社員も限られていました。そこで他事業部門を横断的に支援し、ノウハウを社内に広く行き渡らせ、案件の質を高めることを目的に、2009年から2010年にかけて組織を設立したのです。

 しかし、化学品と食料の2つのセグメントが個別に同じ機能を持つのは非効率だという結論に至り、2016年にN&A本部事業開発部として両組織を統合しました。その後、ウェルネス事業本部も支援対象に加わり、2021年には化学品セグメントであるベーシックマテリアルズ(BM)・パフォーマンスマテリアルズ(PM)・N&Aの3事業本部、生活産業セグメントである食料・流通・ウェルネスの3事業本部、合計6つの事業本部を横断して支援する現在の体制が完成しました。

 案件の質を高めつつ、社内に事業投資の知見を広げるハブとして機能しています」

―― 事業開発部の目的とは何でしょうか。

尾崎 「当部は2つの柱を掲げています。第1に、各事業本部の案件を支援し、

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